その世界線を優しく埋めて #NEWS 20th Anniversary LIVE 2023 NEWS EXPO
まずはアルバムの話をしたい。
STORYのとき壮大な4部作の締めくくり、幕引きと感じたけれど、NEWS EXPOはそこからさらに一歩踏み込んだ“供養”の作業ではないかと感じた。
私は2015年秋以降の彼らしか知らないが、その短期間ですら“ありえたであろう未来”はいくつもある。私がNEWSに出会う以前に分岐したであろう世界線ももちろんあるし、私たちが見えない舞台裏で選ばれなかった世界線もあるだろう。
それらの可能性をなかったことにせず、ごろりとそこに転げていた世界線たちをひとつひとつ手に取る。
あのまま続けばあり得たかもしれない明るい未来、あり得たかもしれない不穏な未来、ずっと喉元に引っかかっていて、でも声にしてはいけないと飲み込もうとした未練、など、すべての可能性を否定せず慈しみそして供養する。美しい未来を叫ぶために、今につながらなかった分岐点たちを優しくその手で閉じていく。
20周年の始まりとして盛大に華やかなアルバムにするだけでなく、すべての気持ちを置いていかないところが彼ららしいなと思った。 その”気持ち”も、ファンのそれではなく自分たちの中に秘めていたものを供養したのかもしれない。人に言えないこと・言わないこととして屠ってもよかったのに、あえて万博という盛大なセレモニーのなかでその世界線たちを並べたことに敬服するとともに、人目のつくところにそれを並べられるまでに世界(ファンしか見ない媒体ではなく、誰しもが触れることのできる媒体でそれをやってくれるという意味での)を信用してくれたことを嬉しく感じた。
ツアーでは、数点の衣装を文化服装学院の生徒にデザインを委ねたということにとてもとても驚いた。てっきり私はNEWSの衣装を手掛けること、一挙に引き受けることが増田さんにとっての誇りなのだろうと思いこんでいた。実際、NEWSを一番良く見せられる衣装を用意できるのはまっすーだとEXPOツアーを経た今でもその信頼は揺らがない。でも、一番大切にプライドをもってやってるだろう衣装について「文化の子に思いを伝えてデザインしてもらいました」と穏やかに話す増田さんを見て、もう彼には、他人に委ねる余裕があるんだと静かに衝撃を受けていた。
NEWSにはいつも新しい世界を見せてもらっている。でもそれはNEWSらしさを担う柱のようなものが不動のものとしてそこにあるから、安心してその新しさを受け入れることができる。その柱の一つが『まっすーが手掛けるNEWSの衣装』だと。しかし今回は一部とはいえそうではなかった。では“そうではない”姿の彼らがどう見えたかというと、ペンライトの海の中で変わらず輝いている私の大好きなNEWSだった。過去に敷設してきた柱は根を張り枝葉をつけ、その実をかじり、時に分け与えながらどんどん先へ進んでいっている。荒野がシロツメクサの花畑になり、柱が根を張る森林となり、美しい希望へと歩んでいく。数年前には思いもしなかった景色だ。地に残るわずかな足跡を必死に追わずとも、固執していた“らしさ”に引きずられずとも、眼前に輝く光に向かって歩を進めれば良い。その眩しさが貴すぎて自分が惨めに思える瞬間もあるけれど、そんないじけた影ぼうしさえも愛おしく思われてるのを実感してしまうのである。
きっと僕らはundertaker
いくつもの思いやあり得たかもしれない世界線をそっと埋葬し、覚悟をもって美しい希望を引き受け開拓していく。このひと節が、今までとこれからの彼らを象徴するフレーズだと思った。
NEWS EXPO完走、おめでとうございます。
未来の話をするのは怖いけど、変わっていくことも怖いけれど、きっと良い旅路になることは間違いない。そんな確信をもらえたツアーでした。
NEWSに、すべてのチームNEWSに幸あれ!