STORYが怖かった私へ
私はSTORYが怖かった。
①NEVERLANDから本格的に始まったコンセプト強めのファンタジー路線、アルバムが出るたびハマる世界観、それがこの「STORY」で最後になってしまうこと。
②「圧倒的リアル」と打ち出され、ファンから手書き文字や音声、自分のストーリーをつのっていること。
どちらも怖かったけど、どちらかといえば②が怖くてしかたがなかった。
私はNEWSの創るものが好きだったのに、私たちの声なんていらないのに。夢を見せてよ。それを求めてるんだよ、それが私があなたたちにお金と時間を費やす理由だよ。
先行で世に放たれていた「SUPER STAR」も、ラジオで流れた表題曲「STORY」も、少プレで披露された「STAY WITH ME」も、正直「ふうん・・・」くらいでしっくりこなかったのもある。
とにかくすごく楽しみで、すごく怖くて、新しい沼に飛び込んだばかりというのもあって、『STORYは私にとって”ひとつの区切り”になってしまうかもしれない』という不安も渦巻いていた。
フラゲ日は忙しいのを理由にブックレットだけ読んだ。
その内容に、「私たちはちゃんとNEWSに見守られていた」と鳥肌が立つ。
今まで興奮と共に垂れ流していた私たちの考察を公式としてちゃんと拾っている、この数年、彼らは私たちと確かに共にあった。
それでもちょっと勇気がでなくて、音源は聞けなかった。忙しいことを理由に髭男のYoutubeを見ていた。在宅勤務でたっぷり時間はあったのに。
発売日。
意を決してCDを取り込む。Xperiaに転送する。6年の仲の相棒、MDR-NWBT20N Pを接続。
ソニー SONY ワイヤレスノイズキャンセリングイヤホン MDR-NWBT20N : Bluetooth対応 ビビッドピンク MDR-NWBT20N P
- 発売日: 2013/10/19
- メディア: エレクトロニクス
私はこのイヤホンを愛している。
高いのから安いのまでいくつか試したけれど、これが価格に対し音質の良さがずば抜けている。音が立体になり、頭のなかで分解される心地よさをお手頃価格で体験できる、この数年で一番付き合いの長い相棒。この子のおかげでハマれた音楽は数しれず、この子を通して音楽に救われてきた。
相棒が奏でた音は、うじうじと指先でこねくり回していたSTORYへの不安や迷いを一瞬で吹き飛ばした。STORYには、いつもと変わらぬNEWSの音と、変わらぬファンタジーがあった。
全然しっくり来ていなかった「SUPER STAR」の脳梁に落ちる四つ打ちベース、脳天をつきぬけるオケ、左耳に駆け抜けるアコギ。
立体的に展開される音に乗せ脳をまっすぐ横断するテゴチャンの高音、髄膜を包むまっすーの声、上あごに染み入る慶ちゃんの低音、ふわふわと運動野をめぐるシゲの声。
あんなに「サッカーソングはあんまり馴染まないなあ」なんて何度もTVを見て思っていたSUPER STARが、こんなにも感動的なものだったなんて。
変わらぬ曲へのこだわり、音のつくりを前にしたら、①も②も不安ですらなくなっていた。
「何度でも」、「STAY WITH ME」での、NEVERLANDから比べたらずっとぐっと伸びた表現力に、楽しかっただけではないこの数年の苦みが滲む。
「Perfect Lover」の曲のオシャレさをさらりをこなせるその軽やかさ。
「Love Story」で交換する愛のメロディ。
「エス」のスキャンダラスで強引な渦、真綿で喉元を締めるようなベースライン、内耳を狂わす吐息。
「君の言葉に笑みを」に問答無用で用意された私たちのパート。
「クローバー」の、あけっぴろげになる彼らの心臓。
「NEW STORY」で降りたつ真っ白な道。
夢の国を出て、宇宙を旅して、想像の世界を通り抜けたどり着いたのはNEWSの”内臓”だった。
普通は決して他人には見せることのない、見せるのを躊躇うはずの”内臓”を躊躇なく、丁寧に魅せる。この「STORY」というアルバムは、エンタテインメントに生きるファンタジーであるNEWSの究極のリアルであり、私たちとつないだ手のぬくもりを確かめるものだった。
今回、僭越ながら「君の言葉に笑みを」に私の声が採用された。
「これが私の夢。」
実際に送った音声の8割*1がカットされた上で使われたこの言葉。
素材として使い易いセリフであるが故に採用されたのであろうが、なんだかとても灌漑深かった。もちろん自分の声が使われたという下駄は履いているけれど、なんだろう、NEWSとしての夢、もちろんそれは大前提としたうえで、NEWSはちゃんと私たちの夢に、人生に”共にあろう”としてくれているんだな、と、この曲を勝手に解釈している。
こうやって”リアル”に、その体温を感じるリアルなアルバムだけど、圧倒的に”ファンタジー”でもある。
張り巡らされた回収されてない伏線があるのはもちろん、真っ白な空間でべったりと手を濡らす彼らの血の滴る内臓を握らされるようなその感覚は、まぎれもなくファンタジーだ。
「STORY」というアルバムで彼らのはらわたを通った私たちは、また新たなファンタジーへ歩みを進める。4つの旅の先には、また新しい旅がある。もう怖いものは何もない。この先の景色も、きっとまだ見たことない景色ばかり広がっているのだろう。
もう何も怖がることはない。私の人生は、彼らと共にある。
*1:送ったのは「おばあちゃんになっても、東京ドームでペンライトを振りたい!これが私の夢。」